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  早わかり・諫早湾干拓問題

この問題について、私なりにまとめてみました。


(1)諫早湾とは。

諫早湾は、長崎県は有明海に面した日本最大級の干潟。どのくらい広いかというと、ここだけで国内の全干潟面積の6%を占めてしまうというくらい広い。実際に行って来た人の話によると、見渡す限り泥・泥・泥という広さ。まあ、とにかく広いというわけだ。ここに住む生物として有名なのは、なんといってもムツゴロウ。釣りキチ三平の一編としてもでていたけど、ハゼ科の魚で、干潟の泥の上をズルズル、時にはピョンピョコと動き回る、ラブリーな生き物。諫早湾は、このムツゴロウの国内最大の生息地でもある。

(2)干潟ってなに?

干潮時に海から顔を出す、遠浅の泥っ原とでも言おうか。そんなとこです。何で大事か。これには、2つの大きな理由がある。一つは、「海の肺」と言われるほどの、水質浄化作用を持つこと。干潟は、遠浅で、水温も比較的高く、例えば貝類や微生物といった、水質浄化に大きな役割を果たす生物が住みやすい環境である。一つ例を挙げると、東京湾でもまだ漁師がいるのを知っているかな?あれだけ工業・生活雑排水が流れ込む東京湾で、なんでまだ魚が捕れるのかというと、やはり干潟の果たす役割が大きい。東京湾の場合は、「三番瀬」と呼ばれる、船橋市付近に広がる広大な干潟などが果たしている役割が大きい。二つ目は、やはり生物の宝庫であると言うこと。一般に、水域と陸域の境には生物が多いと言われるのだけど、干潟はこの条件にぴったり当てはまる。さっきも言ったように、遠浅で水温も比較的高いため、微生物、それを餌にする貝類や魚類、そしてまたそれを餌にする野鳥達がたくさん生息している。干潟は、渡り鳥にとっても中継地としての役割が非常大きい。

(3)干潟と文化

この広大な干潟と共に生活してきた諫早には、独自の文化がある。例えば、ガタスキーを使ったムツゴロウ漁もその一つ。干潟では、ふつうズブズブと沈んでしまって動きがとれないため、幅の広いスキーのような板に片足を載せて、もう片足で泥を蹴って動き回る。で、ムツゴロウ漁というのも他に例を見ない特殊な漁法で、船のいかりのような形をした針が糸の先についた竿をびゅんと振って、泥の上に横たわるムツゴロウを引っかけて取るというもの。このほかにも、諫早独自の文化はたくさんある。日本人は、とかく自分の文化を大切にしないと思う。文化というのは、それまで何百年もかけて、人々の知恵と経験の上に育まれてきたもの。その文化を、ろくに意味を理解もせずに簡単に葬り去ってしまうのは、どうかと思う。次の世紀は、互いの文化を認め、尊重し合う時代だ。

(4)諫早湾干拓事業とは?

諫早湾干拓事業は、簡単に言えば干潟を干拓して、農地を広げると言うもの。もともとこの計画は20-30年前の高度経済成長期に計画された。事業主体は、農林水産省。それに、地元の自治体である長崎県と諫早市。当初の計画では、現在の計画面積の約3倍であったという。そのころは、国を挙げての食糧の増産が盛んだった。で、計画が立てられたわけだ。この辺の状況は、長良川河口関問題や中海・宍道湖干拓問題とも似たものがある。

(5)事業の問題点。

まず第一には、環境・文化を破壊するということ。これについては前述したので、省略。予算と事業の目的についても、大きな問題がある。まず建設費だけど、当初1300億円と言われた総事業費は、現在の時点で2500億円に修正されている。今後さらに膨らむとの推測が、一般的。税金の垂れ流し。つぎに、事業の目的。農地の拡大と言うけど、減反を推進している国が、広大な水田を新たに作るという矛盾に、気づかない人がいるだろうか。また、これだけでは建設の理由として不十分なので、「防災」という目的も新たに付け加えられた。しかし、効果については専門家から疑問の声が出ている。そもそも、なぜ農水省が防災事業を行うのか。防災は、建設省のお仕事。干拓後の利用計画についても、未だに白紙の状態。でも、干拓をする。一度決めてしまったから止められないという、霞ヶ関の常識。でも、同じ霞ヶ関にある総務庁からは、干拓後、水田としては利用しないようにという勧告がされている。そらあ、農地を作るのにお金をかけて、つぶすのにもお金をかけるという、詐欺行為のようなものだからねぇ。短期的な、それも一部の業者の利益のために、数百・数千年の歴史の産物が姿を消そうとしている。

(7)今回、農水省がやったこと。

農水省は、湾を締め切るための堤防の建設を進めていて、この14日に、その水門を閉じる「式典」をおこなった。背筋も凍るような、ギロチン処刑式典。これにより海水の流入が止まり、干潟は乾燥し始めている。梅雨の時季には、雨水によって淡水化も進み、全ての干潟生物が死滅するであろうと言われている。1ヶ月たった今日現在、現地では早くも強い悪臭が漂い始め、保健所も調査を検討しているとのこと。常日頃の自然の恩恵を忘れた人間の行為に対する、自然の報復は始まっている。

()今できること。

とにかく、関係機関に抗議の意志表示をすること。NOの声を、国会に届けること。今からでも、水門を開ければ干潟の回復は可能。梅雨までの20-30日がデットライン。各種イベントもあるので、時間のある人は是非参加を。


内容について、質問・ご指摘等がございましたら安部までご連絡下さい。

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